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2007年02月01日

第1回ee-netセミナー

1月22日(月)仙台市青葉区北目町のFiveBridgeにて
「第1回ee-netセミナー」を開催いたしました。

当日の様子をまとめましたので、ぜひご一読ください。

なお、次回のセミナーは2月26日(月)に開催予定です。
ぜひ、みなさまご参加ください。

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<第1部 18:30~20:40>
1.開会の挨拶
 起業教育ネットワーク東北(以下、ee-net) 代表 渡邊忠彦


2.話題提供
  「ベテラン進路指導教員に聞く
   高等学校におけるキャリアデザイン教育の現状」
 話題提供者
 宮城県塩竈女子高校元進路指導部長 會澤純一郎先生

今回のセミナーは、ee-netが主催する初めての一般向け勉強会。

 起業教育そのものを題材とする前に、現在のキャリアデザイン教育全般の課題を把
握するため、小・中・高校の教員、地域の支援者など各セクターの方々にご参加頂
き、情報・意見交換を行った。


 話題提供者の會澤先生からは、長年、県内各地の高校の進路指導に携わられた経験
から、高校での進路指導(キャリアデザイン教育)がどのようになされているのか、
についてご報告を頂いた。以下、報告のあらまし。

07012201.jpg

 配付資料に沿って、高等学校の進路指導の現状についてお話し頂いた。

 強く訴えておられたのが、生徒一人ひとりを大切にするという教育のあり方。
 学力信仰を捨て、生徒の存在を認める。生徒の自信を喪失させず、生徒の中にある
夢や希望を引き出し、それを実現させるために手を尽くすことが重要。

 そのような指導を行うべきであるが、どうしても職員室の病気ともいうべき、官僚
制の逆機能としての儀礼主義・前例主義があり、一人ひとりに適した進路指導は難し
いのかもしれない。

 だからこそ、教員は社会の変化を理解し、それに応じて、進路指導も変化させてい
かなればいけない。さらに、進路指導担当者には外部との連携が重要 であり、ネッ
トワークづくりにもっと積極的になるべきだ、と仰っていた。

 もう一つ、印象的な話としては、山形県で一番進学率の高い高校(山形東高校)を
例とした、 文化力が高い学校は、学力も高いというお話。その高校では、一流大学
に入り、その後各界で活躍している卒業生を呼び、講演会を開催している。それ を
聞いた生徒たちは、先輩の姿をロールモデルとし特段の指導を行わずとも、勉学に励
むようになる。

 逆に、「勉強しないと、おまえが困るんだぞ」などという、レベルの低い目標の提
示(強引な指導)では、子どもたちに響かないのではないかとの問題提起がなされ
た。


 以上、約50分ほど熱っぽく語って頂き、話題提供は終了。
 その後、渡邊代表を交えてのフリーディスカッションへと移行した。


3.フリーディスカッション

 會澤先生の報告を受け、フリーディスカッションがスタート。
 渡邊代表がファシリテーターをつとめ、全体で話し合いがもたれた。

07012202.jpg

 ディスカッションの中心となったのは、日本の教育制度そのもの。
 アメリカの教育制度を引き合いに出しながら、教育のあり方について熱いディス
カッションとなった。

 アメリカへの留学経験がある方からは、アメリカの教育は「個を創る」ものであ
り、日本の教育は「個を捨てる」ものであるとした。ただし、必ずしもアメリカの教
育制度がいいというわけではないが、一つの視座としての発言であるとの話題提供が
あり、そこから議論が発展していった。

 たとえば、日本の教育は「個を捨てる」というよりは、「共に生きるため」のもの
であり、欧米の教育は「何かになるため」のものであると言える。従って、日本社会
が欧米化していけば、必然的に「何かになるため」(問題解決力)の教育も必要に
なっていくのではないかと考えられる。

 また、先ほどの文化力の話題にも繋がり、「文化力とは人間を理解する力であり、
人間が理解できれば、人間を認めることができる。そこから本質的な教育ができるは
ず」との発言もあった。

 たとえば、子どもをやる気にさせるには、接する大人が、子どもを信じ、社会を
知っていることが重要で、そのためにも、指導する側が人間を理解する力が必要であ
るなど。

 以上のような話の他に、とある中堅企業の人事経験者から、より厳しい現実もある
との報告がなされた。(入試)5教科テストの平均点が100点を割るような高校では、
就職先の選択肢が少なく、企業の面接で「先生からここを受験するように言われた」
としか答えられない現状も理解して欲しいと。

 地域間の格差は急速に広がっており、高校現場教員の負担はますます大きくなって
おり、その現状に果敢に立ち向かう教員の苦悩も伺い知ることができた。

ディスカッションの最後は、学校と地域との関係について。「開かれた学校」とし
て、学校内部に地域の活力を取り入れていく、旧来の考え方から一歩進んで、地域の
中の学校という位置づけを明確にして、保護者以外の、地域の産業人も巻き込んだ教
育環境の整備を積極的にしていくべき、との発言もあった。

 また、学校と地域をつなげた教育環境をつくるための設計力が必要になるだろうと
の発言もあり、「起業教育東北モデル」は、その点でも優れているのではないかと考
えられる。
 

※いずれも簡単に結論が出るような話題ではなかったが、現在のキャリアデザイン教
育の課題がいくつか浮き彫りになった。


<第2部 20:40~22:00>

 第1部の熱気そのままに、交流会が開始。いくつかのグループに分かれ活発な意見
交換がなされた。参加者からは、こうした教師と一般の社会人や経営者が話す機会は
ほとんど無く、非常に新鮮だった。非常に意義のある場であった。小・中学校の先生
にも参加頂き、意見交換をしたい。等の意見が聞かれ、延長を重ねた最後の時間まで
熱気が冷めることがなかった。